かやぶきの里、舟屋の町並み…京都中~北部へ山海の恵みを味わう旅に出よう
京都中心部から車で2時間北上した先の、美山町、京丹後市、伊根町などの京都中~北部はまだまだその魅力が広く知られていないエリア。海と山が織りなす景観、地域の食材を活かしたグルメも素晴らしく、きっと未知なる京都の魅力に気づかせてくれるはずです。<体験レポ>
「菓歩菓歩:bio sweet’s capocapo」有機栽培・無農薬素材から生まれるかわいいおやつ
京都中部~北部への旅は、ひとつひとつの町や見どころの距離が離れているため、ドライブがてらレンタカーでの移動がおすすめ。京都府中部の京丹波町にある「菓歩菓歩(かぽかぽ)」は、移動中に甘いものでひと休みしたい時にぴったりの、小さなお菓子工房。有機栽培・無農薬の選りすぐりの素材で作る、焼菓子、ケーキがメインの小さなパティスリーです。
元々は宅配業態からスタートし、その美味しさで徐々に顧客を増やし、2015年に現在のカフェ併設工房での営業スタイルを開始しました。
おすすめは、和知地域の特産品である“和知栗”を贅沢に使った丹波和栗スイーツ。
京丹波は元来霧が多い地域で、朝晩の寒暖差があり、栗の育成に適した産地。平安時代の書物にも京丹波栗に言及する一説があり、まさに和栗のルーツといえる地なんです。大粒で糖度が高く、栗本来の甘みがしっかり感じられるのが京丹波栗の特徴で、この地域では地元産の栗を使ったスイーツを出すお店も増えてきているとか。
「菓歩菓歩」の看板スイーツは、そんな和知栗をまるごと1粒のせたモンブラン。ロールケーキ、タルトにも和知栗が使用されています。
個包装で手土産にもぴったりのバターサンドクッキーは、レーズンバター、ショコラを含む7種類。夏はマンゴー、レモン、冬はピスタチオ、カカオニブと季節のフレーバーも登場します。本日のパフェ、アルコールの用意もあり、お菓子を出す器も京丹波の陶芸家の作品。“ここならでは”が一皿に詰まっています。
イートインには、店内席に加え、暖かい時期は外のテラス席も人気。山々に霧立ち上る風景がなんとも心安らぐ景観の中で、癒しのカフェタイムをどうぞ。
■菓歩菓歩:bio sweet’s capocapo
住所:京都府京都市上京区堀松町419
Tel:075-606-5264
営業時間:11:00~18:00
定休日:火・水曜
美山を代表する観光名所「かやぶきの里」で昔ながらの風景を巡る
京都府中央部に位置する美山町(みやまちょう)は、面積のうち山林が9割を占め、約220年前~150年前に建てられたススキ、イナワラ、オガラを材料にした茅葺(かやぶき)屋根の伝統建築が今なお多く現存するエリア。
のどかな農山村に昔からの伝統的な民家が建ち並ぶ景観を今なお残しているのが「かやぶきの里」です。
かやぶきとは植物でふかれた屋根の総称で、美山の場合ススキが多用されているのが特徴。国の重要伝統的建造物群保存地区である「かやぶきの里」ですが、現在も100名ほどの地域住民の方がここで生活しています。
集落内には2つのカフェと美山民俗資料館、2件のお宿があり、冬は雪灯廊ライトアップのイベントも実施され、この時期は特に国内外からの観光客が集中。岐阜県の有名な集落である白川郷とは屋根の建物自体の作りが違い、美山は入母屋造りとなっており、屋根の組み方が異なっています。
近くで屋根の断面をみるとかなり植物が密集していているのが一目瞭然。美山民族資料館では、200年前の農家住宅を再現しており、畳敷きの客間、囲炉裏のある台所、厩(うまや)がついた茅葺き家屋の内部の様子をのぞき、当時の暮らしぶりを垣間見ることができます。
「京ゆば処 静家」でヘルシーなゆばの幅広い可能性を味わう
美山町の澄んだ空気、清らかな水が湧き出る美山町。のどかな山合いの風景を見渡せる「京ゆば処 静家(せいけ)」でぜひお昼を。国産大豆をブレンドした自家製の生ゆば・干ゆばを頂けるお店で、ランチタイムのみ営業しています。
今回は、7種類のゆば尽くし膳を注文。先付けは茅葺屋根の家屋を思わせる入れ物を使った汲み上げ湯葉。生ゆば刺しは、引き上げと汲み上げ、それぞれの食感の食べ比べを楽しめるようになっていて、味噌としょうが醤油で味を変えつつ頂きます。
中でも、今回感動したのがゆばステーキ。タンパク質豊富なゆばをもっと子どもでも親しみやすい形で提供したい、とのことから編み出された一品で、陶板でバターを熱してゆばをひっくり返しながら焼いていき、表面に焦げ目がついてお餅のように膨らんできたら食べごろ。焦がしたゆばを噛むと中はとろんと柔らかく、バターの香りもあいまってどこかチーズを思わせる味わいです。
白米は、ゆばの豆乳鍋、山椒で炊いた竹ゆば佃煮と一緒に。甘味はなめらかでやさしい味わいのゆば豆乳のプリンと、最後までゆば三昧のコース内容です。
お店の方によると、ゆばはくみ上げるタイミングやどれくらいの薄さに仕上げるかで印象が異なり、作り手によって全く美味しさが変わってくるのだそう。ぜひ美山町に来たら「京ゆば処 静家」ならではのゆばの美味しさを味わってみて。
■京ゆば処 清家 美山本店
住所:京都府南丹市美山町下平屋広瀬36-1
Tel:0771-75-1698
営業時間:昼食: 11:30~14:30 夕食: なし
定休日:基本月曜(臨時休業有)
様々な作品のロケ地でもおなじみ、国の重要文化財「舞鶴赤れんがパーク」
舞鶴市は、旧海軍舞鶴鎮守府の開庁以降、明治~大正期の赤れんが造りの建造物が数多く残るまち。「舞鶴赤れんがパーク」は100年以上前に建てられた赤れんが倉庫群で、全12棟のうち8棟が国の重要文化財に指定されている歴史的価値のある場所です。2016年には、「鎮守府横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の動を体感できるまち~」として日本遺産にも認定されました。
赤れんが倉庫のうち、2棟向かい合うように並ぶ倉庫はかつての兵器庫。よく見ると少し外壁が黒ずんでいるのが見て取れます。これは戦時中に上空から狙われにくくするため黒く色を塗っていた名残だそう。そのような歴史の痕跡も随所に残されています。
長い年月を重ねてきた倉庫群は、映画やドラマのロケ地としても度々利用され、近年はこの周辺エリア一帯をあげてロケ地巡りという楽しみ方も押しています。
倉庫群のうち5号棟は商業棟として活用されており、主に飲食店が入居。舞鶴初の缶詰専門店・CAN BRICKや、舞鶴ご当地プリン・マイヅルプリン、5号棟カフェなどが営業しており、5号棟カフェでは取材時にちょうどクラフトビールを醸造しているタイミングでした。今後、重要文化財の中でビールが飲める体験ができる日が待ち遠しい!
■舞鶴赤れんがパーク
住所:京都府舞鶴市字北吸1039 番地の2
Tel:0773-66-1096
営業時間:9:00~17:00
旅の夜は「京都舞鶴ARIYOSHI(ありよし)」の極上懐石で贅沢に
舞鶴きってのグルメスポットとして知られる「京都舞鶴ARIYOSHI」は、料理人のご主人と女将が夫婦2人で切り盛りする隠れ家的な割烹料理店。地元京都の食通の方も通う、完全予約制の名店です。
お料理はおまかせコースのみ。シーズンごとの名物メニューはありつつ、基本日々旬な素材を選りすぐって献立を組み立てるため、次の日も全く同じものが食べられるとは限りません。
今回の訪問時は、舞鶴の熊肉の椀物からスタート。熊肉のロースにゆずを散らし、黒胡椒をほんのりきかせた名物の一品です。
スペイン産の18か月熟成生ハムは、最初はそのまま一口、2枚目からは白米を包んで脂がとろける美味しさも楽しんで。
塩昆布とエディブルフラワー、紅葉おろし、ポン酢を絡ませた舞鶴の鯛、塩と泡醤油で頂く鮪の刺身の後は、赤バイ貝、ウニ・いか・いくらの手巻き寿司が続きます。お寿司はカウンター越しにご主人から握りたてを手渡しでいただき、そのままぱくりと頬張って。
濃厚な蟹味噌グラタン、いわなの卵と鮪、いか、鯛のあったか寿司、鰤となまこと数の子のおろし和えと温かいお料理が続いた後は、メインの鹿肉のステーキが登場。
絶妙な温度で火入れされた柔らかな鹿肉は上品なソースと共に。熊肉同様とにかくジビエが美味しく調理されていて、普段ジビエを食べる習慣がない人でもその美味しさに驚くはず。
〆の蟹ご飯は食べ方を変えてお茶漬けとしても。甘味の黒豆パンナコッタはとにかくとろんと濃厚な口当たりで、もはや飲めそうな領域。どの逸品をとってもこだわりが感じられる舞鶴のコース懐石は、特別な旅の夜にぴったりです。
■京都舞鶴ARIYOSHI
住所:京都府舞鶴市桃山町4-2 ウィズビル2階
Tel:0773-77-5205
営業時間:18:00/18:30/19:00 一斉スタート
定休日:不定休
伊根湾沿いに舟屋が連なるのどかな景観に癒されて「伊根の舟屋」
のどかな山や竹林のイメージの京都とは違う、“海の京都”と出会えるのが京都北部の丹後半島に位置する伊根町。波の穏やかな伊根湾沿いに230軒ほどの舟屋が立ち並び、海と山に囲まれた美しい景観がなによりの見どころ。
この地域特有の舟屋建築は、船が出入りできる舟屋と生活空間の母屋がセットになっているのが特徴で、昔は海に面した1階に舟を置き、2階の住居で暮らす生活を送っていました。海に臨む舟屋に実際に泊まることができる宿泊施設も増えてきています。
富山県氷見市、長崎県の五島列島とならび日本三大鰤漁場のひとつである伊根町は、鰤のみならず岩牡蠣、ナマコ、鰆(さわら)などの海産物が名物。
美味しい海鮮を頂くなら、地元の海産物を中心に伊根漁港で毎日水揚げした魚を使った料理を提供している「鮨割烹 海宮」へ。1階はカウンター席、2階はテーブル席で、どこからも伊根湾ビューを楽しめます。
お昼の寿司ランチセットは、ホンバイ貝、茶碗蒸し、お造り、かさごの煮つけ、寿司がセットになった豪華な内容。新鮮なお造りの白身魚やつぶ貝の歯応え・弾力がとにかくすごく、煮付け、寿司、お造りと様々な食べ方で海の幸を頂けて3,300円はコスパ抜群!
この味とロケーションを求めて平日でも満席となる人気店なので事前の予約が必須です。
■鮨割烹 海宮
住所:京都府与謝郡伊根町字平田593番地1
(舟屋日和施設内)
Tel:0772-32-1700
営業時間:11:30~14:30、17:00~21:30
定休日:水曜日
国の特別名勝「天橋立」で海と空の絶景を見渡す
“海の京都”のもうひとつの人気観光スポットといえば、日本海の宮津湾にある「天橋立」が有名。全長約3.6kmの砂州に松が生い茂る特徴的な風景は、陸奥の松島、安芸の宮島とともに日本三景に数えられています。
「天橋立」の絶景を楽しむならロープウェーで山頂の天橋立ビューランドへ。空と海が織りなす青の絶景だけでなく、“股くぐり”で景色を逆さに見ると、天橋立が空をかける龍のように見えることから「飛龍観」と呼ばれる絶景も楽しめます。
天橋立に来たら、20周年を迎えた「天橋立ワイナリー」にもぜひ寄り道を。
海に面した敷地内のぶどう畑でワイン造りのためのぶどう栽培を行っており、栽培・熟成・充填まで一貫して行うワイン醸造所、直売所、2階にレストランを併設。隣で直営のパン屋も営業しています。
国内でも海にここまで近いワイン畑があるところは珍しく、谷からの吹き下ろしの風の影響もあって海からの潮風が影響しづらいこともワインに適したブドウが作られる一因なのだそう。
直売所では赤、白、ロゼ、泡と種類豊富なワインを取り揃え、特に日本ワインコンクールで金賞を受賞したナイヤガラの白ワインが一押し。ブドウのフルーティさとジューシーな香りを存分に感じる、ワイン初心者でも飲みやすい1本なのでお土産にもおすすめです。
■天橋立ワイナリー
住所:京都府宮津市国分123
Tel:0772-27-2222
営業時間:【工場見学・ワインショップ】10:00〜17:00
定休日:水曜日
「丹後くろまつ号」で車窓からの景色とごちそうを頂く
一味違う観光を楽しむなら、様々な側面から丹鉄沿線の魅力を堪能できるレストラン列車「丹後くろまつ号」にぜひ乗車を。
通常の列車と違い、2~4名がけのテーブル席に乗車する形で、大海原や緑豊かな美しい山々、のどかな田園風景を眺めつつ、地元の海鮮がメインのお料理と京都の地酒を頂けます。(今回は2023年10月~2024年3月までの「地肴コース」)
お料理は西舞鶴のサカナテラスという料理店と考案した内容で、美味しいお造りと煮魚、酒のアテとなるチーズなどがついたお酒好きにはたまらない内容。日本酒は飲み比べで3種類を用意、季節の地酒もラインナップします。
道中、絶景ポイントの奈具海岸では停車、由良川橋梁では列車の走行スピードを落とし、ゆっくり景色を楽しめるような配慮も。絶景と食を楽しみながらの約1時間20分の鉄道旅はあっという間。
刻々と移り変わる車窓からの景色を眺めながら頂くお魚と地酒はまた格別の美味しさです。
■京都丹後鉄道「丹後くろまつ号」
予約:HPまたは電話(「WILLER TRAVEL」予約センダー:0570-200-770)
運行日:金・土・日・祝日
最新の運行情報は、京都丹後鉄道HPを確認。
京都旅行といえば、清水寺や祇園、嵐山などの王道もよいですが、リピーターの方はぜひ今回ご紹介した中~北部方面も目指して出かけてみてほしいところ。きっと今まで知らなかった京都の魅力に気づかされるきっかけとなる景色や体験が待っていますよ。(女子旅プレス/modelpress編集部)
※記事は女子旅プレスの調査及び主観に基づくものであり、店舗のサービスが保証されるものではありません。
【Not Sponsored 記事】