甘納豆の原点を味わう! 岡女堂本家「始まりのぜんざい」が語る豆の物語【北海道・十勝】
北海道十勝にある岡女堂本家で、甘納豆誕生のきっかけとなった「始まりのぜんざい」を開発! 豆の町・十勝で育まれた伝統の和菓子や珍しいおかめコレクション、ご利益いっぱいの豆神社など見どころ、味わいどころを紹介します。
おいしい豆を育む北海道の大地。その中心ともいえる十勝地方には、豆の文化が色濃く息づいています。なかでも「豆の町」として知られる本別町には甘納豆や豆菓子の老舗「豆屋とかち 岡女堂本家」があります。
札幌から釧路に向かう道東自動車道の本別インターで降りて、車でわずか2分。国道242号線沿いにかつてローカル鉄道として活躍した旧ふるさと銀河線「岡女堂駅」の跡地が見えたら、そこが今回の目的地です。
甘納豆ルーツの味を求めた老舗の試み
ふるさと銀河線に岡女堂駅が誕生したのは1995年。同社4代目社長が社費を投じて開設したこの駅は、近隣住民にとってうれしい「地元の足」となっただけではなく、節分の豆撒きなど豆の町をアピールするためのさまざまなイベントにも活用されたとのこと。
今でも岡女堂駅の撮影を目的にたくさんの鉄道マニアが訪れます。
駅に隣接する広い駐車場に車を停め、玄関の階段を上っていったそこが「豆のミニテーマパーク」岡女堂本家です。
広い敷地の中にはピラミッドを抱く事務所や時計台の形をしたホールなどユニークな建物が並びます。また神戸からの生産拠点本格移設を記念して1989年に建てられた異人館風ドーム型売店もあり、屋根の風見鶏や街路灯がノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
売店内へ一歩足を踏み入れると、そこには「豆の町」ならではの光景が広がっています。
看板商品の甘納豆を筆頭に素焼きの黒豆、大豆、オホーツクの塩豆、豆のようかん、黒豆を使用した特製のお茶まで、並ぶ商品はどれも豆、豆、豆……そして奥には甘納豆誕生のきっかけとなったという「始まりのぜんざい」も。
甘納豆誕生秘話から開発した「始まりのぜんざい」
岡女堂本家の創業は安政2(1855)年。その始まりは京都・本能寺の門前での出来事でした。初代店主が焦げ付いたぜんざいの小豆をつまみ食いし、「これはいける!」と感じたのをきっかけに工夫を重ね、甘納豆の原型を生み出したとのこと。
この逸話は代々語り継がれ、現在では甘納豆誕生秘話として知られるようになりました。
この甘納豆誕生の物語を現代に蘇らせるべく開発したのが「始まりのぜんざい」です。「焦げ付いたぜんざいから甘納豆が生まれたという伝承をもとに『いにしえの味わい』を再現して開発しました」とその思いを熱く語るのは、6代目店主の鈴木社長。
「始まりのぜんざい」は甘納豆のルーツを表現するため、一般的なぜんざいよりも濃厚な仕上がりとなっています。小豆本来の素材感が際立ち、甘さは控えめながらも深みのある風味が特徴です。
このぜんざいは夏には「冷やしぜんざい」として爽やかに、また秋冬は「暖かいぜんざい」としてほっこりしたひとときを提供してくれ、そのお値段は税込450円。季節ごとに異なる味わいを楽しむことができます。
見どころもいっぱい! 岡女堂本家
岡女堂本家では、甘納豆やさまざまな豆菓子を味わえるだけでなく、敷地内には見どころも豊富。その1つが「おかめミュージアム」です。売店の地下には屋号の由来となった「おかめ」のお面や人形、掛け軸など、150点を超える貴重なコレクションが展示されており、皆さんを「おかめスマイル」でお迎えしてくれます。
数あるコレクションの中でひときわ目を引くのは、高さ1.8mの巨大な能面。そのジャンボなおかめの面は、見ただけで圧倒されてしまいます。
岡女堂内でもう1つチェックしておきたいスポットが「豆神社」。これは、神戸にあった甘納豆の生産拠点を当地に移設した際に、大国主命と共に国造りを行った少彦名命(すくなひこなのみこと)を「豆の守護神」として祭ったものです。
この神様は五穀豊穣や知恵を司るだけでなく、病気平癒や健康開運にもご利益があるとされています。岡女堂を訪れた際には、ぜひお参りしてそのご利益を授かってください。
「豆の町」本別で育まれた深い豆文化と、その象徴ともいえる岡女堂本家。この地を訪れることで、ただおいしい豆菓子を味わうだけでなく、日本の伝統や歴史、そして人々の営みがいかに豆と深く結びついているかを肌で感じることができます。
甘納豆や「始まりのぜんざい」の甘さが口に広がる瞬間、そして「豆神社」で手を合わせるひとときは、日常の喧騒(けんそう)を忘れさせてくれるでしょう。
【岡女堂本家の基本情報】
場所:北海道中川郡本別町共栄18-8 岡女堂本家(道東自動車道の本別インターから車で約2分)
営業時間:4~9月 9:00~18:00、10~3月 9:00~17:30
定休日:無休
おかめミュージアム:観覧料無料。おかめコレクションの観覧時間などは同社に確認してください。
問合せ先:0156-22-5981
執筆者:大谷 修一(北海道ガイド)
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